エリートパイロットの独占欲は新妻限定
なんとなく足が向いたのは出発ロビーだった。チェックインカウンターには長蛇の列。大勢の人たちが行き交う中、無意識に智也の姿を探している自分に気づく。
昨夜智也から送られてきたメッセージに、午後三時過ぎのフランクフルト行きのフライトに搭乗すると書かれていたのが、頭に残っていたのだろう。
……やだな、なにを期待してるんだろう。彼に会えたからといってなんなの。もう帰ろう。
自分の不可解な行動に首を傾げながら方向転換したときだった。遥か先から異彩を放つ人たちがこちらに向かって歩いてくるのに気づく。
ターミナルにいる人たちの視線もいっせいにそこへ向けられる。これから乗務するクルーたちだろう。
その先頭を歩くふたりの男性のうちのひとりが智也だった。
黒いジャケットに制帽。初めて見る智也の制服姿に鼓動が弾まないわけがない。
ただでさえ背が高く容姿端麗な彼が、よりいっそう凛々しく見える。そこだけ光が差しているようでさえあった。
隣の機長と話をしながら歩く智也は、きっと由宇には気づかないだろう。今日ここへ来るのも特別話していない。
彼らに進路を譲るために数歩うしろへ下がると、不意に智也の視線が由宇をとらえた。
ドキッとして体が硬直する。