エリートパイロットの独占欲は新妻限定

これ以上、彼に迷惑をかけられない。由宇は笑顔を浮かべて智也を見た。できるだけ明るい顔をして、彼には本当に平気だと思ってもらいたい。

ところが智也は表情を緩めず真剣な顔のまま。眼差しが微かに熱っぽいものになったのは気のせいか。

由宇はその視線をどうしたらいいのかわからず、お尻をもぞもぞと動かして身じろぎをした。
智也に見つめらてドキッとしない女性はいないだろう。由宇ももちろんそのひとり。なんとか目を逸らして、和幸の遺影を見るふりをした。


「由宇ちゃん」


不意に名前を呼ばれ、「はいっ」と返事をする。鼓動が弾み、声が裏返ったのが恥ずかしい。


「俺と結婚しよう」


なにを言っているのかわからなかった。
紙に書いたものをただ読んだだけ。そう、たとえば物語を音読でもしているような。王子様がお姫様にプロポーズしているシーンをただ単に読み上げただけ。

そうでなかったら聞き間違いだ。

どちらだろうと、由宇は目をぱちくりとさせて智也を見つめ返した。
< 4 / 160 >

この作品をシェア

pagetop