エリートパイロットの独占欲は新妻限定

「聞こえなかった?」
「あ、いえ、聞こえました。でも……」


当然だろうが智也の手もとには、本もなければ紙切れのひとつもない。


「結婚しよう、俺と」


聞き間違いでもなかった。
どうして智也からプロポーズなんてされるのか、ちんぷんかんぷんだ。付き合うどころか友達でもない。父親の後輩という以外に、ふたりの間にはなんの接点もないのだから。


「なにがなんだかわからないんですけど……」
「三杉さんに由宇ちゃんをお願いされた以上、俺はそれを守ろうと思ってる」


あくまでも真面目な態度を崩さない。


「いえいえ。そんなのお気になさらないでください」


そもそも和幸は結婚のつもりでお願いしたわけではないだろう。ちょっとした話し相手だとか、そんな程度だ。それだって、本気でそうさせようと思ったわけではないかもしれない。話の流れだとか、気持ちが塞ぎ込んだときに吐いた弱音だとか。
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