エリートパイロットの独占欲は新妻限定


笑いながら繰り返す。


「そう。俺たち、たった今結婚したばかりのまさに新婚だろう」
「そうですね」
「なのに、キスもまだときている」
「キ……」


いきなりキスの話題になり心が大きく乱される。どんな顔をしたらいいのかわからず、あちらこちらへ視線を泳がせた後、うつむく以外になかった。

そんな由宇の視界の隅に智也の足が映り込む。彼が由宇との距離を詰めたのだ。
ドキッとしながらも顔を上げられない。


「ゆーう」


優しい呼び方をされて、暴れだした鼓動がどうにも止まらない。

彼に手を取られ、そっと引き寄せられる。控えめな抱きしめ方が、智也のためらいを一番表している気がした。
きっと智也は、必死で由宇を好きになろうとしているのだろう。結婚したからには由宇を愛そうと。だからジョークで由宇を笑わせ気持ちを解して、少しずつ、一歩ずつ近づこうとしているのだろう。
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