エリートパイロットの独占欲は新妻限定
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翌日の午前十時。引っ越し業者の到着とほぼ同時刻に、智也も自宅を訪れた。
わざわざ業者に頼むほどの荷物でもなかったが、処分してもらいたいものはあるし、ひとり分の荷物とはいえ智也の車では何往復もしなくてはならない。それなら一度に済む方法がいいだろうとなった。
二トントラック二台のうち一台は智也のマンション行き。もう一台は処分業者行きと別々になる。
いよいよ長年暮らした家との別れ。いろんな思いが込み上げ、うっかり涙を流してしまったが、智也がそっと拭ってくれた。
彼がいてくれて本当によかったと思う。もしも智也と結婚していなかったら、たったひとりで家を処分し、たったひとりで誰もいないアパートで新生活を始めなければならなかったのだから。
自宅を買い取ってくれた不動産屋に鍵を渡し、智也の車に乗り込んだ。
大した量の荷物ではないため、マンションへの荷物の運び入れもそれほど時間をかけずに終了。和室に準備された小さな仏壇に和幸の遺影と位牌を置き、ふたりそろって線香を手向ける。
〝お父さん、今日からここで智也さんと暮らします。遠い空の上で見守っていてね〟
そう心の中で呟きながら手を合わせた。