エリートパイロットの独占欲は新妻限定
ふたりでマンションからそう遠くない蕎麦屋で引っ越しそばを食べ、再び舞い戻る。
「由宇、今日からが本当の意味でふたりの始まりだ」
「はい」
「これからは俺にたっぷりと甘えるんだぞ。っていうか甘えてもらわないと困る。三杉さんに〝お前が頼りないからだ〟って叱られるからね」
和幸に認めてもらうこと。それが智也にはなによりの使命なのだろう。
由宇が「はい」と答えたときだった。インターフォンが来客を知らせて鳴り響く。
「お、来た来た」
誰かと約束していたようだ。すぐに玄関へ向かった智也のうしろから女性が現れ、緊張が走る。
明るい栗色の髪を頭のてっぺんでお団子にしてまとめ、しっかりとしたメイクを施した派手な美人だ。
誰だろう……?
一歩下がって両手を前でそろえた。
「由宇さん、はじめまして! 妹の深雪です」