エリートパイロットの独占欲は新妻限定
それを真に受けて真剣に考えるとは、智也はなんて誠実なのだろう。
「そうはいかないよ。俺はキミと結婚する」
意見のブレがまったくない。智也は断固として言いきった。
ある地点からここまで一気に時間が飛んだ感覚がする。じつはふたりは恋人同士で、その間の記憶がすっぽりと抜け落ちたのか。
由宇はポカンと口を開けて唖然とするばかり。
「ここは引き払うんだよね?」
「……そうですね。一ヶ月後には」
「その後、どうするつもり?」
智也は痛いところを突いてきた。というのも由宇は、大学を無事に卒業したというのに就職先が決まっていないのだ。就職活動が始まる直前に和幸に病気が見つかったため、それどころではなかった。
同級生たちが次々と内定をもらうのを横目に見ながら、由宇が通うのは病院。なんとかなるだろうと思っていたが、現実はそんなに甘くない。
「卒業後の進路が決まっていないって三杉さんから聞いてるよ」
「それはそうですが……。とりあえずアルバイトでもして就活します」