エリートパイロットの独占欲は新妻限定


どういうことなのかと由宇が首を傾げると、深雪は持ち上げていたボックスを指差した。


「私は魔法使い」


ますますわからず、さらに首を捻る。


「深雪はヘアメイクもやるスタイリストなんだ」
「こう見えて、芸能人からも引っ張りだこなの」
「……スタイリストで、引っ張りだこ」


ふたりの顔をそれぞれ見ながら言葉を反復した。
つまり有名人、すごい人なのだ。大きなボックスはコスメ類がたくさん入っているのかもしれない。仕事道具だ。


「だから、由宇ちゃんは安心して私に任せて。ヘアメイクも服もバッチリ決めてあげる」


自信満々に言い、戸惑う由宇の手を引いてダイニングチェアに座らせる。


「お兄ちゃんは完成までは出入り禁止」


智也の背中を押してべつの部屋へ追い立てた。


「さて、それじゃ早速始めるね」
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