エリートパイロットの独占欲は新妻限定


ボックスを開くと、たくさんのメイクアップ道具が整然と並んでいた。


「わぁすごい」


思わず声が漏れる。色とりどりのシャドウやリップは見ているだけでもワクワク。これから自分がどう変わるのか想像もつかない。


「終わったら鏡で見せてあげるね」
「はい。よろしくお願いします」


椅子を向い合せて座り、深雪は早速ベースメイクから始めた。


「智也さんととても仲良しなんですね」
「え? そう?」
「私、兄弟がいないので羨ましいです」


お互いに遠慮なしに言い合える兄弟がいたら、父親がフライトでいない夜ももっと心強かっただろう。


「そっかぁ、由宇ちゃん、ひとりっこなんだってね。お父様を亡くされて大変だったでしょう」
「はい。……でも、智也さんがそばにいてくれたので」
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