エリートパイロットの独占欲は新妻限定
由宇が目を白黒させていると、智也はプハッと吹き出した。そんな笑顔まで様になる。
「本当にいないよ。そうじゃなきゃ由宇ちゃんに結婚なんか申し込めない」
たしかにそうではあるけれど。
でもでも、それだっておかしいよ……!
なにしろ由宇は美人でもかわいくもなく、これといって特徴のない顔立ちなのだから。かろうじて色白なところがチャームポイントだが、それだってほかにとりたててないからこそ。どこにでもいる平々凡々の顔は主役でも準主役でもなく、その他大勢以外にない。
ヘアスタイルもなんの変哲もないボブ。ナチュラルといえば聞こえはいいが、毛先を遊ばせたりゆるふわパーマをかけたりというしゃれっ気のないもの。
身長が高く見目麗しい智也と自分では、どこからどう見ても吊り合わないのだ。それに十歳も年下の由宇では、彼にしてみたら子どもも同然だろう。
「ひと晩だけ考える時間をあげる」
「ひ、ひと晩?」
本気で結婚を考えているのか。
たったそれだけで大事な結婚を決めるなんて……。