エリートパイロットの独占欲は新妻限定


「一緒に住み始めて結構経つよね?」
「三週間くらい」
「それなのにしてないの?」
「……してない」


ふたりはキスまでだ。それもライトなもの。


「ただの一度も?」
「一度も」
「なんで?」
「こっちが聞きたいよー」


最初は笑っていた佐奈の顔は徐々に物悲しく変化していき、最後には憐れみを滲ませた。

入籍をした夜は酔っ払い、気づいたときには朝。それならば次の夜だとドキドキしていたにもかかわらず、あっさりと『おやすみ』で夜が明けた。
フライトでいない日もちょくちょくあり、いまだにふたりは清い関係のままだ。


「だから子どもっぽいかなって聞いたんだ」
「うん……。その気にもならないくらいなのかも」


周りにいるキャビンアテンダントやグランドスタッフのように美人でもなければ、大人の色気もない。
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