田舎娘が大国の皇女様に!?ー皇女の暮らしは毎日刺激的ですー
「(ワン、ツー、スリー…ワン、ツー、スリー…)」
私は頭の中でステップを確認しながらアレクシスのリードについていく。
幸いにも男性に免疫がない以外、勉強など他のことに関しては覚えが早いみたいで優秀な自分の頭と身体に感謝したい。
「(…何だ。意外と優しくリードしてくれるじゃない)」
アレックスの忠告があったので身構えていたけれど、曲が進むうちに自然と体の力が抜けていた。
…ところが、曲の終盤に差し掛かるとアレクシスはにやりと笑う。
「姉様、この曲は最後の盛り上がりにかけてちょっと変わるんですよ」
「変わるって何が…!?」
私が言葉を言い終わるかのところで、急に私の腰をぐいっと引き寄せて先程より体と体が密着した形になる。
近くにアレクシスの心臓の音と息遣いを感じ、かあーっと顔が火照るのを感じた。
「あれ?ステップがずれてますよ?」
「(この意地悪弟…!また私をからかって…!)」
私の異変に気付いていながらもダンスレッスンは終わらない。
私は曲が早く終わらないか考えながら心臓がバクバク鳴るのをどうにか抑えようとするけれど、考えれば考えるほど鼓動は早くなっていく気がした。
目の前には15歳とは思えないほど大人びた広い胸板…。
頭の中はドキドキと焦りでいっぱいいっぱいになってしまい…。
「あっ…」
ついに足元がおぼつかなくなって、身体が傾くのを感じた。
「(あ…倒れる…!)」
そう思った私はぎゅっと目をつむって衝撃に耐えようとする。
…けれど何故か身体に痛みは感じず、ふわりと支えられている感覚があった。