田舎娘が大国の皇女様に!?ー皇女の暮らしは毎日刺激的ですー



「その木から離れろ」



初めて聞いた男性の声にはっとして、声のする方を見つめる。

その人はすらりとした長身にきちんとした礼服を着ていて、見るからに一般人ではないことは分かる。
風になびくさらさらな黒髪に黄金の木と同じ宝石のような金色の瞳をもつ人だった。
…というか警備が厳重なこの皇宮に一般人がいるはずがない。
皇室と関係のある人なのだろうか…。


そんなことを考えているうちに彼は私を睨みつけながら大股で近づいてくる。

私は咄嗟に身構えて目線を逸らしてしまう。

この木に触れようとしたのが彼の怒りを買ってしまったのだろう。
私は気まずい表情のまま、その場を動けずにいた。


「(怖い…)」


まるで突然冷たい風が吹いたかのように寒気がして、身体は小刻みに震えていた。


そしてしばらく睨みつけられたままでいると、ようやく彼は口を開いた。



「お前は誰だ?…見るからにしてどこかの令嬢か?ここに立ち入るには許可は得ているのか?答えろ」


感情のない凍てつくような声…。

その冷たい声色に私は息苦しさを覚えた。



「ま…まずは自分から名乗るのが常識ではないのですか?」



やっとの思いで絞り出すように小さな声で言葉を発することができた。

すると小さなため息が聞こえてから…。


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