君にひとつ、質問があります。



「なんだかんだ、日本語がいちばん照れるね」




さきほど、あんなにも色んな国の言葉で“あいしてる”を連呼していた彼がぽつりと言った。



本当にその通りだと思う。



熱い顔を冷まそうと両手で頬を覆った。けれど、全身でどきどきしている私の体温では、そんなの全く意味がなくて。




「ここで、僕から」

「……?」



「君にひとつ、質問があります」




その声に導かれるように私の視線は黒縁眼鏡の奥の彼の瞳と交わった。




「僕と、付き合ってはくれませんか?」




上手い言葉を、素敵な言葉を返したいのにこんな時に限ってなにも思いつかないポンコツな思考回路。



なんとか萩瀬くんに伝えたくて、嬉しくて、ガタリと椅子を引きここが図書室であることさえ忘れて、




「私も、あいしてます!」




目一杯の気持ちを大きな声で叫んだ。




「付き合っての返事が、あいしてますって、」

「あぁ、私テンパっててすみません」

「しかも、いちばん恥ずかしい日本語で叫ぶって、」

「え、あ、ごめんなさい」

「まあ、いいやいちばん嬉しいから」




と、真っ赤になりながら萩瀬くんはお腹を抱えて笑った。




あとで、彼に言われた。「毎日僕のこと見ているからいつ声をかけてくれるんだろうってずっと待ってたのに。なかなかきてくれないから我慢しきれなくて僕から声をかけてしまったよ」と。






見ているだけだったはずの異世界の住人の彼は、今日、私の彼氏になった。








【君にひとつ、質問があります】おわり





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