君にひとつ、質問があります。
「いや、だってその、」
「……?」
言い訳なんて見つからなくて、バレてしまっているのに取り繕うなんて無理な話で。そもそも私が彼に頭で敵うはずないのに、考えるだけ無意味な話だ。
手元に視線を落とし、握りしめた拳にさらにぎゅっと力を込める。正直に謝る。それしか道はない。
「……いつもここから見ていてすみません」
「え?」
「知らない奴に毎日見られていたら、気持ち悪いですよね、引きますよね……」
潔く自ら白状すれば、こくりとなんとも綺麗な所作で小首を傾げる目の前の人。
あれ?想像していた反応と少し違うのですが……?
なんなら、なにを言っているんだと言わんばかりに眉根を寄せて机越しに顔を覗き込んでくる。
その距離は反則だと、カァッと顔が熱くなるのを感じた。
目の前でクスクスと小さな笑みを溢しするりと黒縁眼鏡を綺麗な指先で上げてみせる。
楽しそうなその姿になんだか関係者であるはずなのに置いてけぼりを食らっているような気分。
俯く私の視線を誘導するように彼はとんとんと人差し指でテーブルを叩いた。