君にひとつ、質問があります。
「はい、じゃあまずはドイツ語」
「え、ちょっと、なにか関係あるんですか?」
「まあまあ、訳してみてよ」
「……」
「Ich liebe dich」
文字を書きながら、書いている言葉を読み上げる萩瀬くん。私に答える時間などまるで与えないように、どんどん文字を羅列させていく。
「はい次、スペイン語 Te quiero」
「……え、あの」
「はい次ね、イタリア語 Ti amo」
「あの……」
「僕が全部書き終わるまで待ってください」
「……はい」
言葉を挟めば訳せと言われたのに、待ちぼうけ。
ノートに綴られる彼の綺麗な文字をひたすら視線で追って、発音のいい彼の声音にただただ溺れた。これじゃあただの極上のリスニングタイムだ。
「次、フランス語 Je t’aime」
「……」
「中国語 我愛你」
「……」
「韓国語 사랑해요」
「……」
「はいこれで最後。英語で、I love you」