君にひとつ、質問があります。
「……あの、」
「はい」
にこりと微笑まれ、私はぽつりと空気を震わせる。
「“あいしてる”」
彼はまるで囁くように「正解」と口にした。
日本語にしたその言葉はなんだかこそばゆくて、むずむずする。私にはまだ対応しきれないその言葉を彼はゆっくりと音にした。
「あいしてる」
「……」
「なんて、日本語にしたらちょっと重たいですよね。でもようするに、」
ゆるりと彼は自分のかける黒縁眼鏡に触れた。そして少しばかり頬を赤らめ私から視線を逸らせば、ぽつりと音にする。
「僕は君のことが、好きなのです」
「……え」
「これが僕が今日、君に声をかけた理由です」
「……」
「だからもちろん名前だって知ってる」
と、まるで恥ずかしさを隠すように言葉を紡いでいく彼の顔は先ほどよりもみるみる赤に染まっていく。
本当におかしい。私の顔もきっと同じ色をしているに違いない。熱くて、熱くて、たまらない。