ホントの魔法は意外と地味だ
「空手の型と魔法と一体どんな関係があるかさっぱり解らない。リズは解る。」
 ダイアナがエリザベスに問いかけた。
「型じゃなくて修行の方法に関係があるみたい。 空手って水に入って正拳突きの鍛錬をしたりするでしょう。それと魔術が関係あるみたいな事をボブが言ってた。」
「 リズもボブに教わった事あるんだ。」
「違うよ、私は 見てただけ 。ボブが姉にそう言ってたの。二人でよく海や山の滝修行に行ってたな。」
「 滝修行って滝から落ちる水に打たれるやつね。実は修行を口実にしてデートしてたとか。あっ冗談だから怒らないでね。」
「 デートとまでは言わないけど、ボブだからって言うのはあったかもしれない。修行も結構大変だったみたい。地味なトレーニングウェア、必ず持っていってたから。」
「 地味ってどういうこと。繋がらないんだけど。」
 ダイアナはエリザベスの言葉が今ひとつ理解できなかった。
「家のトレーニングルームで稽古する時は陸上の短距離みたいな結構小さめで露出の多いウェアなの。姉は〈 ボブに筋肉の動きを見てもらうのよ。〉 って言ってたけど。」
「 確かにあの格好は動きやすいし体も軽い。」
 ダイアナはうんうんと頷きながら喋っている。
「でも修行に出かける時は持って行かないのよ。夏の海辺なんて全然違和感ないはずなのに。」
「お姉様はバキバキの腹筋見られるのが恥ずかしかったのかも。リズは逆だよね、いつ腹筋見せつけてる。」
「 違うでしょう、いつも私がシャワーを浴びてる時間に部屋に来るからたまたまそういう格好してるだけ。」
「そうなの、私はただの露出狂かと思った。ゴメン、ウソだよ。でもトレーニングウェアって大切だね。気分が変わるから効果も違ってくるよ。」
 二人の会話を聞いてるのか、隣の席に座っている三人組の男の子たちは会話を止めて少しだけ視線を向けている。

 トレーニングウェアの話を続けていると同級生のリチャードがやって来た。
「 よく聞くとすごい会話だね。」
「 もしかして盗み聞きしてたの。」
 ダイアナが突っ込む。
「 近づいたら聞こえただけだよ 。で、同席してもいいかい。」
 リチャードは喋りながら座った。
「 もう座ってるじゃない。 ごちそうさま。」
 ダイアナが笑いながら言った。 エリザベスもクスクス笑った。

 留学生を見ながら二人のウェイトレスが喋っている。
「あの人たち日本語とても上手ですね。」
「 アナウンサーみたいな喋り方ね。」
「イギリス人だけど実は英語が喋れないとか。」
「それはないと思うよ。留学生って言うぐらいだから。」
「 どうして英語で会話しないのかしら。」
「規則があるからみたい。日本では日本語で話さなければいけないんだって。でも宿舎の中は大丈夫だって。」
「 そんな規則あるんだ。」
「試してみようか。」
 ウェイトレスの一人がの席に行き、英語で〈コーヒーのおかわりいかがですか。〉 と尋ねると リチャードは日本語で答えた。
「ありがとう、ください。こちらのお嬢様方にも注いであげて。」
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