【完】君に惚れた僕の負け。
本日はSPを務めさせていただきます。



朱里くんの腕を組んだ。


――ぎゅ。



「は……?な、なにこの手?」



「大丈夫、あたしが守ってあげるから」



年上の義務、果たさせて。



って……あれ?



なんか会話、途切れちゃってるけど。



静かだなぁ。と思ったら絞り出したような声が聞こえた。



「……恋々」



「なに?」



「……歩きにくい」



「え、なんで?」



そんなに力強かったかな?

今ちょっと緩めるね。



「こんなでどう?」


朱里くんを見上げた瞬間、勢いよくそっぽ向かれた。


「え、朱里く」「つーか離せ」



腕に巻きつく私の手はバシーンと振り払われて、いったぁ。


文句のひとつでも言おうと見上げた先には、すぐそこの店をびしぃっと指し示す朱里くん。


「あの店行くぞ」


突然早足になって、少し先を歩きはじめた朱里くんに急いでついていく。


「待ってよー」


そんなに行きたい店なのかな?


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