【完】君に惚れた僕の負け。
「朱里くん、これ買おうよ?」
「え、これを?」
「うん」
「……別にいいけど」
やったぁ。ご機嫌の足取りでレジに持っていく。
すると店員さんが言った。
「贈り物ですか?」
「いえ、自分たちので……」
って答えながらお腹がグーって鳴った。
ぎゃ、朱里くんに聞こえた?
反射的にお腹に手をあてる。
「あっ。……おめでとうございますぅ」
一瞬目を見開いてから、にっこりと笑みを深める店員さんはあたしと朱里くんに順番に目を移す。
隣のレジで接客している店員さんも、お金を取り出しているお客さんもあたしと朱里くんをちらっちらっと三回くらい小分けに見た。
え、なに?
その視線に戸惑っていたら、いつのまにか朱里くんは会計を済ませていて。
「お幸せに」
店員さんが心を込めて言った。
意味がわからない。