【完】君に惚れた僕の負け。
「だって……朱里くんが」



もごもご言ってて聞こえねーな。


「なに?」


「……朱里くんが、女の子と」



いらいらするなぁ。


「はっきり言えよ」



「朱里くんが、この前のお昼休みに!女の子とデートするって喋ってるの偶然聞いちゃって!だから……あたしもって思うじゃん」



つんっと尖った唇。怒りっぽい声。



「え……それって、恋々」



――妬いてるよね?



心臓が期待に揺れる。



「なんで俺が女子とデートしたら悪いの?」



にやり、突然上機嫌になっていく自分に気づいた。


でも。



「朱里くんの方が後輩なのに、あたしより進んでるなんて悔しいもん……」



――期待。

その二文字がこんなにあっさりと墓場に葬られる。


「……いや、妬けよ」


むかつくなぁ。

何で俺以外の男とでかけるために、めかしこんでんの?



恋々の隣、ソファに座って、小さい顎をガシっと掴んだ。



「ねぇ、恋々」


< 147 / 421 >

この作品をシェア

pagetop