【完】君に惚れた僕の負け。
「……はなひてぇええ!」
こんな顔を通行人に見られるわけにいかないの!
そうじたばたしていると。
何かが、目の前に振り下りてきて、ものすごい音が続く。
――バチーン。
「いっってぇーーー!!折れたああああああ」
ふうちゃんが片腕を抑えながらぴょんぴょんと跳ねている。
いつのまにかすぐ隣にあった人影に顔をあげると。
「朱里くん!」
ってことは?
さっき目の前で見えたのは、朱里くんによる手刀打ち(つまり空手チョップ)……?
状況を飲み込んでいくにつれて脳裏に次々と浮かんでくるのは、朱里くんの瓦割りの映像。
さーっと青ざめる。
「なにしてるの朱里くん!空手の技を一般人に使ったらだめでしょう!?」
「うるさい。手加減してるわ」
あ、これは。この真っ黒いオーラは。
朱里くん、ご機嫌斜めだ。