【完】君に惚れた僕の負け。
「元カノね、誰かさんに似てて。すっげー抜けてんの」
「へ?」
「一人でこの近所の飲食店にいて満腹まで食べて、財布忘れたって。危うく無銭飲食。そんな前科間抜けすぎんだろ?だから助けてきただけ」
「そうなんだ……いいことしてきたんだね」
優しいなぁ。思わず口元ほころんじゃう。
あたしてっきり、密会かなにかしてきたのかと……。
「朱里くんは、元カノさんのこと好きなの?」
なんとなく聞いてみた。
「……上目遣いやめろ」
そう言って目を隠されたあたしは。ふわりと気配が近づくのを感じた。
「俺は、元カノに性格そっくりなどうしようもないほど抜けてる鈍感女がずーーーっと好き」
耳元で聞こえた囁き声に、思わず肩をすくめる。
……って、え?
待って。