【完】君に惚れた僕の負け。
「実はね、朱里くんに言わなきゃいけないことがあるの。びっくりしないで。心を落ち着けて聞いてね」



また熱に侵される可能性があること、怖がらなくていいから。



だって24時間、あたしがついてるから。



「はぁ……なに?」



「朱里くんが中二のときのあの風邪、今回みたいに高熱が出てたでしょ?」



「うん」



「実はあの日、あたし、朱里くんにキスされたの」




あたしの声を聞くや否や朱里くんはガバッと跳ね上がるよう体を起こした。



「……っ、はぁ!? っ、げほっ!!ごほっ!!」



「わああああ、大丈夫!?」




背中をさすって、清涼飲料水を渡した。



一口二口飲んで、ごほ、と咳払いを一つする朱里くん。




「……落ち着いた?」




窺うように覗き込むと、熱のせいか、顔が真っ赤で。



余計心配だよ……。



「……今の、キスって、マジで言ってる?」



消えそうな声。喉痛いのかな。



「うん。ほんとうなの。その時寒いっていうから添い寝したんだけどね。そしたら突然『(チャ)コ、可愛い、大好き』って言いながら唇に、キスを」





両手で顔を覆い隠した朱里くんは手のひら越しに言う。




「――――……覚えてない」



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