【完】君に惚れた僕の負け。
「うん。わかってる。熱のせいで頭がやられちゃったのかなって、幻覚が見えたんだと思うよ。だから今もすごくあたしは心配なの。朱里くんの頭が」
「うるせー……。つうかそれ、チャコでも亜瑚でもないし。もう俺にはいろいろとわかったから」
いろいろとわかった?
「何か思い当たる点があったの?」
「チャコと亜瑚みたいな名前もう一個あるだろうが……」
なんて?
声小さくて良く聞こえなかったよ。
なんて言ったのか聞こうとしたら、朱里くんはぱたりとベッドに倒れ込んで、頭まで布団をかぶってしまった。
「とにかく幻覚とかじゃないし、安心してはやく出てって」
「でも心配……」
「またおんなじことして移されたくなきゃ、秒で出てって」
おんなじこと……。
ってキスってこと!?
「う、じゃあ……、なにかあったら絶対言ってね……?」
部屋をそっと出た。
だけど勉強を始めてしばらくしたら、「ああああああああ!」ってたまらなくなったような叫び声が朱里くんの部屋から聞こえてきたんだもん。
飛び上がっちゃったよ。
「どうしたの朱里くん!」
慌ててドアの向こう側へ叫ぶ。
「なんでもねーよ!寝る!」
……朱里くんて、高熱の出る風邪ひくと行動と情緒がおかしくなるのかな。
そっとしておこう。