【完】君に惚れた僕の負け。
怒りにちょっと震えてから、カレンダーに書き込まれた「お祭り」の文字を見てため息をついた。



沈んだ気持ちでリビングに行くと、朱里くんがのんびりと夏ミカン食べていたの。


うん、なんか癒される……。


「恋々も食う?」



みかんをひとつ差し出す彼のお隣に座る。

いただきます。


「ありがとう。朱里くんは今日のお祭り行くんだよね?」


「うん。恋々も行くんだろ?」


「う、うん」


ドタキャンされたなんてかっこ悪くて言いたくない。そんなプライドで大嘘。


「朱里くんは誰と行くの?」


「中学の友達」



中学の、ってことはあたしと朱里くんの共通の友達の可能性がある。


朱里くんたちに混ざれる可能性も、ないでもない。



「その中にあたしも知ってる人っている?」


「たくみとゆうまと川本は知ってんじゃないの?小学校一緒だし」


「あー、名前は知ってる」




なんだ全然仲良くないなぁ……。

入れないかぁ、ちぇ。




「あとは、亜瑚とその仲間2人」



「亜瑚……」



って、
「元カノと行くの?」



「聞いてた?みんなで行くの」



「ふーん……」




いつの間にか尖っていた唇のこと、朱里くんの指先が押して、やっと気づいた。



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