【完】君に惚れた僕の負け。
戸惑う私の目に映る、朱里くんに息を飲む。


「俺が、亜瑚と一緒に行っちゃっても、本当にいいの?」


空気をふくんだ声が、あたしの鼓膜を震わせる。



ぞくぞくっと背中が伸びあがった。




「……本当は嫌なんじゃないの?」


「そんなことないもん……」


「恋々も祭り行くの断って、家で俺と遊ぶ?」




そう言いながらふわりと近づく甘い香りに思わず目を閉じた。



朱里くんの唇が、耳を食んだ。

舌先に耳たぶを舐められて……。


「……んっ」



体を押し返そうと思ったのに。


抵抗しようとした力はあっけなく抜けていく。


ソファに身をゆだねて、乱れそうになる吐息を噛み殺すように抑える。



「……っ、」



朱里くんの舌が首元を這う感触に体が震えた。



そんなあたしを楽しそうに見ているなんて、ひどすぎるよ……。



「ねぇ、恋々。さっきのやきもちでいっぱいの目、もっかい見せてよ」


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