【完】君に惚れた僕の負け。
唇は上へとのぼって。
ちゅ、とあたしの唇のすぐ横に柔らかくて暖かい感触が押し付けられた。
「……っ! 朱里く、やだ……」
「元カノにやきもち妬いたり、こうされても抵抗しないのってなんでなの?」
朱里くんの、ぼうっとしたその目が。
あたしの心臓を どんどん速めていく。
「なんでって……」
あ。真っ白だ……。
あたしは何にも考えられなくなったまま、ただ、朱里くんの熱っぽい顔だけを見つめて。
「……そういう顔、ずるいんだって。止まんなくなったらどうすんの」
そういって、あたしからそっと離れた朱里くんはその場で背を向けた。
もう終わり……?
思わず手を伸ばしたくなる。