【完】君に惚れた僕の負け。
「ただいま!」
夕飯の匂いを嗅ぎつけた小学生のように勢いのある声が玄関から聞こえた。
「おかえり……!」
あたしは小走りで玄関に向かった。
そこには、さっきまで走っていたかのような朱里くんが肩で息をしていて。
「なんでそんな走って帰って来たの?」
「そんなことより、なんで祭り行かなかったの?」
「あ……実はお昼にドタキャンされまして……」
お恥ずかしい……。
「馬鹿かよ。言えよ。恋々祭り行きたかっただろ」
「うん」
「マジでバカ、馬鹿すぎて。ばぁか」
「バカバカ、いいすぎだから……!」
って言いながらも、あたしはなんだか、楽しくなってきてる。
お祭りに行けなかった寂しさは、朱里くんが帰ってきたら消えたみたい。