【完】君に惚れた僕の負け。
「いってーな」
ジンジンする頬に手を当てる。
あー、すげー怒ってんね。
自分で直す気みたいだけど、それ、余計はだけてるから。
つーか根本的に着方間違ってんだよ。なんだよそれ。
「自分の力量を過信しすぎ。俺が直してやるよ」
そんな危険な服は着せてらんないから。
「え」
一瞬戸惑った恋々の正面に移って、ぐっと襟元を詰めた。
「ここはきわどいから、自分で持って」
「あ……はい」
小さくて緊張気味にも聞こえる声。
そうやって胸元だけはしっかりとおさえてもらっとけば、周りの目も大丈夫。
ぎゅ、ぎゅっと直していく。
「……悪いけど、こっから引っ張んね」
「は……はい……」
わきの下の隙間に手を通して、そこからしっかりと紐を引きなおして形を整える。
頬を上気させて、恥ずかしそうに下唇を噛む恋々は次第に俯く。
「もう少しだから……我慢して」
「……う、うん」
浴衣の内側から引っ張り出した紐を、帯の下の隙間でなんとか結べた。
その間、俺の心臓がどうなっているか。
だいたい想像してみてください。