【完】君に惚れた僕の負け。
ピピピ……。

目覚まし時計の音がする。



今日から二学期だよね、わかってるよ。
あと10分寝かせて……。


スヌーズボタンをポチ。


静まり返った部屋で、
あたしの意識は、夢の中に引きずり込まれていく。




――『あたしも弟か妹が欲しい!』



幼稚園児のあたしがママのエプロンにまとわりついて叫んだ。



『朱里くんがいるじゃない』


ママはそう言ったんだ。



朱里くんは友達だよ?

あたしは年下の弟か妹が欲しいのに。



納得できずにいたら、ママはあたしに目線までかがんで諭し始めた。



『朱里くんはまだ幼稚園に入ってないでしょ?恋々の方が一つ年上なのよ』


『そうなの?』


『そうよ。あ……でもそんなに弟扱いしないで。(たった三日違いで弟にされたら朱里くんと朱里くんママになんて思われるか……)』



なにかぶつぶつ言っているママにあたしはもう一回聞く。



『じゃあ朱里くんを弟にしたい!』


『んー、ていうより、恋々がお姉さんっぽくなればいいでしょ?』


『お姉さん……』



それは、きらきらした輝かしい言葉に聞こえた。




『うん!恋々、お姉さんになる!』


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