【完】君に惚れた僕の負け。
「……重たいよ」
「5教科ぶっ続けだったんだよ。ちょっとは癒して」
ぎゅう、っと抱きしめられて心臓がドキドキし始める。
もう、たらし。
ていうより、むしろ……
「……甘えんぼさん」
「うるせ」
……って、全然離してくれない。
「あの、ご飯作れないよ……」
「今日の飯なに?」
「シチュー」
「夏にシチュー」
「だめ?」
「じゃない。いっぱい食べたい。腹減ったぁー……」
ずんと余計に重さが加わって、ちょっとよろけた。
「もう、朱里くん! 邪魔だってば」
べしっと腕を払ったら、
「いったぁー。……着替えてくる」
ふてくされたような声のあと、頬に柔らかな感触がした。
これって、唇の……。
今、ほっぺにちゅーしたでしょう……!?
絶対に気のせいじゃないのに、朱里くんは何てことなさそうな顔して自分の部屋に入っていった。
「……もう」
この火照った体も、ほっぺも。
ドキドキうるさい心臓も、全部置き去り。
……朱里くんの、ばか。