【完】君に惚れた僕の負け。
「……っ、あはは」


朱里くんが笑いだした。それも、爆笑だよ?



あっけにとられて、浮かびかけた涙が止まった。



「豪快だな。こんなことするやつ初めて見た」



そう言いながらあたしの隣にしゃがみ込む。


あたしの顔を覗き込む朱里くんは、どうしてそんなに優しく笑うの。



「なんで泣いてんの?」


「だって、お腹すかせてるのに、ごめんね……」


「そこまで腹減ってねーし」



笑い混じりでお米を両手で寄せてあつめていく。


「あの、いいよ。ここはあたし一人でできるから」


余計疲れさせて申し訳ないよ。って、そう思ったのに。



「恋々ちゃん。一緒にやると楽しいよ?」



まるで幼児に向けるようなわざとらしい言い方。



「もう……」


そういう優しさ。
朱里くんってひとは。


本当にあったかい。家族と同じくらい大好き。



「恋々、久々に一緒にご飯つくろっか」


「え……。うん」



嬉しくてついはにかんだあたしを、肘で小突く朱里くん。



「お前素直な性格でいいよね」


ふっと笑う朱里くんは、年下なのに、なんか年上っぽく見える。


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