【完】君に惚れた僕の負け。
たしかにさっきあんなにめんどくさそうに浴室に来た朱里くんなのに。




お湯がでないことを確認した朱里くんは、


どこから取り出したかもわからない書類を見て、マンションの管理会社と業者に電話をしているの。



「あ、そうですか。わかりました。じゃあ明日点検お願いします」


それはもう、華麗な手配。


あたしは何もできず朱里くんをぽかーんと見上げていただけ。



電話を終えた彼は言う。



「今日はガスつかえないけど、明日見に来てくれるって」


「そっか……。ありがとう朱里くん」



あたし一人だったらなす術もなく途方に暮れてたのに……。
朱里くんってすごいな。



「そしたら、お風呂どうしよう?」

「俺んちで入ろっか」

「あぁ!」

「なに?」



その考えはなかった……!


「なんて頼もしい人なの……」


「お前がポンコツなだけだから」



こつんと優しくおちてきた拳とか、呆れっぽい目とか。


なんか、胸の奥がキュンとした。


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