【完】君に惚れた僕の負け。
◇
朱里くんちは久々で、朱里くんのパパとママとおしゃべりはとっても弾んだ。
そんな湯上がりの帰り道。
夜空に浮かぶ星を朱里くんと見上げる。
「楽しかったー」
「よかったね」
「朱里くん、もしかしてたまにお家帰りたくなったりしてる……?」
「ねーよ」
あっさりだなぁ。
でもちょっとだけ、ほっとする。
「あたしと一緒に暮らしてくれて本当にありがとう」
「……、別に」
たわいもない会話が途切れかけて、なんとなく朱里くんを見上げた。
涼しい風が吹き渡って彼の黒髪が揺れる。
きれー、って見とれたとき。
鼻がむずっと……。
「……っ、くしゅ」
もう夜は冷えるんだなぁ……。
両肩を腕で抱きしめたとき。
「湯冷めするよ」
そう言って朱里くんはカバンからパーカーを出して、あたしの肩にかけてくれた。
「準備いいんだね……」
「9月の夜って冷えるじゃん」
「そっかぁ」
「何回夏を過ごせば学べんの?」
意地悪な声。
だけど。