【完】君に惚れた僕の負け。
「……っ、ね、猫!猫だよ!Cat!」
キャット……。
「あぁ」
間抜けな声とともに気が抜けて、安心して、ためいきまで出た。
猫か……。なんだ……。
冷静になってみれば猫でもむかつくけど。
「紛らわしいんだよ」
突き放してもまだ、真っ赤な顔して、動揺してる恋々。
そう。そういう顔してたらいいんだよ。
「一度彼女ができると、人との距離感がこんなに変わるんだね……」
お姉さんびっくりしたよ?、じゃねーよ。馬鹿。
お前以外にするわけねーだろ。
「もー。あたしこういう軽い人って慣れてないのに……」
文句っぽいぼやき声だけど、まんざらでもなさそうじゃん。
もっと近づいてあげようか?
つーか、ドキドキしてよ。
一生懸命ネクタイを結ぶその耳元に唇を近づけた。
「恋々の顔、真っ赤。これから一緒に暮らすのにそんなんで大丈夫?」
あはは、耳まで真っ赤になってやんの。
バカにしてやろうと思った時。
「大丈夫、きっとすぐ慣れると思うから……」
……はぁ?
「……ナマイキ」
慣れんな、ずっとドギマギしてろ。