【完】君に惚れた僕の負け。
――「朱里くん。ぼーっとしてどうしたの?」
恋々の声にハッとして回想が途切れた。
「なんもない」
星空の下、ふたりで同じマンションの部屋に入る。
ここまで、俺の計画はすこぶる順調。
だけど……。
「ただいまぁ」とドアをくぐる恋々の後ろ姿に俺は小さく問う。
「恋々って……家族と離れて寂しくない?」
こんなに緊張しながらした質問に、
「全然?」
恋々はあっさりと即答した。
笑うよ。気が抜ける。……よかった。
笑いながら、俺を信じて大事な恋々を預けてくれたバンクーバーの両親に、めちゃくちゃの感謝を。
俺がちゃんと恋々の面倒見ますからって、そう心に誓いなおす。