【完】君に惚れた僕の負け。

「とにかく、もっとまともなの着ろよ」


べしっとスマホを返した。


……なんだその尖った唇。
不服そうな顔に問う。


「わかった?」


「……うん」


ぜったいに言うこと聞けよ。





そうは思ったものの、文化祭当日の今、本当に着なかったかどうか気になって仕方なくて。


開店したての午前10時。


自分の教室を抜け出して、恋々のクラスに向かった。



まともに歩けないほど、狭い廊下は人であふれている。



「あれ?朱里くんじゃん」



やっほーっとへらへら手を振るのは、囚人服を着た“ふうちゃん”。


こいつに聞くのはシャクだけど。


「……恋々いますか?」


「恋々は今客引き中」


「……え」


客引きって、嫌な予感しかしないんだけど。


「恋々ちゃんすごいよ~。今日だけお色気担当で男の客がっぽり」


お色……。


「死んでもらえますか。恋々は?どこ?」


「ちょ、冗談だってー!怖いなぁ。あ、恋々だ」


その視線を追って振り返った瞬間、呆れを通り越した。


「……あのバカ」


着てんじゃん、デビルじゃん。


なんなの?


なんで言うこと聞かないの。



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