【完】君に惚れた僕の負け。
「……っ」
一針一針、赤い糸で縫い付ける。
規則的に脈打っていたはずの心臓は気づけば 弾けるように飛び跳ねている。
頬を上気させる恋々は、俺を一度見上げて、目が合って、すぐにそらして。
「朱里くん、まだ……?」
急かすな。
こっちだって必死だから。
いつの間にか震えていた針を持ち直して、玉止めをして。
「あ……ハサミ忘れた」
「……えっ、」
俺が距離を詰めると、恋々はぎゅっと目を閉じて、顔を背ける。
恋々が息をのんだのがわかった。
なんなのその余裕が一ミリも見当たらない顔。
今は、そういうのいらない……。
赤い糸を犬歯で噛みしめる。
――プチン。