【完】君に惚れた僕の負け。
「そ、それは……」


朱里くんのせい、なんて本当のこと言えるわけないよ。



だから、言い訳を頭の中でフル回転。



「……ヒナに借りた漫画がすっごく面白かったの」



たしかに一冊読んだのは本当だし、
ここは明るく大嘘をつこう!


「とんでもなく面白いの!朱里くんも読みたかったら、来週まで借りてるから読んでみて!」



しーん。


……あ、あれ?

朱里くんの目は真ん丸だし、唖然としてない……?



「え……漫画? 漫画のせいで眠れなかったの?」


ため息混じりにこぼれた彼の声は、なんだかとっても小さかった。



「朱里くんも漫画好きでしょ?読む?」


「いらねーよ」



イカが墨を吐くように。

ど真っ黒のオーラが朱里くんを包み込む。


これはいわゆる不機嫌モード。



なんで?!



「……顔洗ってくる」


「あ、はい……」


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