【完】君に惚れた僕の負け。

――あたしを、好き。LOVEで、好き。


頭から煙が出る。




でも朱里くんは、昔からあたしをからかうのが趣味だったし、独占欲に見えるのもその延長に思えたけど。





朱里くんってそういえば前に、「好きな人がいる」って……まさか、その相手が。




――360度どこから見ても恋々に惚れてるよ。



そんなことを恋愛の先輩3人に言われたら、もしかしてそうなんじゃないかって考えちゃう。



そう、あたしの自意識は最高潮。



玄関に入るのに、こんなに緊張したことってないよ。



「ただいま……」


リビングに入れば、「おかえりー」といつもとなんら変わらない様子の朱里くん。



一方あたしときたら、バックンバックンと心臓が強く脈を打って苦しいくらい……。



「あの、朱里くん……」



「なに?」


……もしかしてなんだけど、朱里くんってあたしのこと、LOVEで好き?


って、聞けるわけないよ!



「うわ最悪。ドラマの再放送、特番で潰れてんだけど」



番組表を見ている朱里くんのがっかりした声に同調する。



「朱里くん楽しみにしてたもんね」


「だって恋々が好きだから」


ーーだって恋々が好き


ドッギィっと心臓が跳ね上がった。



いや、違う。
今のは「だって、恋々が"あのドラマ"好きだから」って意味だから!



……きゅん。

それはそれで、胸が苦しくて、嬉しい。



胸の中で弾ける新感覚。



なにこれ。



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