【完】君に惚れた僕の負け。
真っ白の頭を抱えて、電池切れになったあたしの背中に、トントンと振動が伝わった。



「……恋々」


ドア越しで聞こえる、くぐもった朱里くんの声。




「俺が恋々のことそういう目で見てるかもってのが嫌で怒ってんの?」


「……え?」


怒ってないし、嫌なわけないし……全部ちがう。


でもなんて言えばいいの。


あたしは、朱里くんに好きになってほしいだけ。


そうじゃないから拗ねてるの。


って、そんなこと言えるわけないよ……!



頭を抱えていたら、朱里くんの笑い混じりの声がやけに切なく聞こえてきたの。


「ねぇ、さっき俺が言ったこと……そんな本気にしないで。落ち込むから」


――コン。


ドアをひとつ叩かれた。

あたしもひとつ、叩き返す。



「……本気で言ってよ、朱里くんのばか」


弱弱しい声はあたしの口の中で消えた。


「コロッケつくったから、部屋出てきてよ」


寂しそうな声に聞こえて、あたしはすぐにドアを開けた。


するとそこには、ほっとしたように笑う朱里くんが立っていて。


「仲直りしよ」


朱里くんはとても切なそうに笑った。



< 293 / 421 >

この作品をシェア

pagetop