【完】君に惚れた僕の負け。
付け合わせも作られて、お皿にもりつけられたコロッケ。
きつね色に揚げられたまん丸の形は、おしゃれなカフェの一品みたい。
「朱里くん……上手すぎるよ」
いただきます。
ふたりで手を合わせてから口に入れると、あまりのおいしさに言葉もでないほど悶絶した。
外は音が鳴るほどさっくさくで中はトロトロなんだもん。
感嘆のため息をつきながらお向かいのお皿に目を移すと。
「えっ、朱里くんのお皿が……!」
大変なことになってる!
あたしが作った焦げ茶色の破裂コロッケが、全部朱里くんのお皿に乗ってるの。
「だめだよこんなの……あたしが責任持って失敗の方食べるから!」
「いい。ふつうにうまいから」
あたしからお皿を遠ざける朱里くんの表情にいたずらっぽいものはなくて。
どこからどう見ても、元気がない。
どうしたのか聞こうとしたんだけど、同時に朱里くんがあたしに聞いたの。