【完】君に惚れた僕の負け。
……朱里くんめ。
まんまと遅刻させられたあたしは、先生からお小言をもらうことから二年生が始まってしまった。
休み時間の今も頭の中を占領しているのは、朱里くんとのある一件。
『キスもまだのお子様だもんな』
今朝、高笑いした朱里くんを思い出す。
朱里くんは、覚えてなかったんだ……。あたしに、キスしたことを!
だけど。
『誰としたんだよ』
憤怒のような驚愕のような形相で詰め寄ってきた、あの様子。
もしかして“覚えてるけどそれには触れるな”。とか、そういうものすごい圧力の牽制だったのかな?
いや、そんなわけないか。
覚えてないなんてぇ……っ。
ドンっとこぶしで机を殴る。