【完】君に惚れた僕の負け。

あたしは昨日のことのように思い出せるよ。



あれは朱里くんが中二であたしは受験生の冬!という頃。




風邪で寝込んでいた朱里くんが『一緒に寝よ』って子犬の目で言うから、あたしは招かれるままベッドにもぐりこんだ。



『寒い……』




がたがたと震える朱里くんがあたしの体の温もりを求めてだきしめてきたんだ。



よしよし、って背中をさすって温めてあげていたとき。



風邪のせいで熱っぽい朱里くんの頬があたしの頬にくっついたの。


『えっ』



動揺して、あたしまで熱くなってきたその瞬間。



『……(チャ)コ、可愛い、大好き……』



ちゅうーーーー。



気づけば唇を奪われていた。



『ちゃ、チャコってだれぇ!?』



飛び起きながら聞いた。


でも朱里くんはすでに夢の中。



猫か犬かわかんないけどあたしは、チャコのような名前の動物か何かと間違えてキスされたんだ。




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