【完】君に惚れた僕の負け。
「家族には、ハグしてもいいって言ったじゃん」
朱里くんにとって、あたしは家族みたいなもんなんでしょ?
”家族より家族になりたい”って言ってたもん。
「……お前は家族じゃねーだろ」
朱里くんの声が体を伝う。
そんな憎まれ口たたきながらも、結局朱里くんはあたしをぎゅっと抱きしめてくれた。
そんなの嬉しくて、本音が漏れちゃうよ。
今、あたしの蛇口全開なんだからね。
「……会いたかった。寂しかった」
「なに、それ……。どう捉えていいのかわかんないんですけど」
ぎゅう、っと力がこもる。
だからあたしもぎゅっと返す。
……好き。大好き。朱里くん。
そういう気持ちが溢れて、言いそうになるのをぐっとこらえる。
「あたしがいない間……なんにもなかった?」
「なんにもって?」
「だって朱里くん女たらしだから……。連れ込んだり……」
言ってて悲しくなってきた……。
「女たらしって……。俺は好きな子にしかべたべたしないって言ってんだろ」
「全然説得力ない」
あたしには色んなことしてくるくせに、よく言うよ。
朱里くんの、馬鹿……。