【完】君に惚れた僕の負け。
”好きな子にしか”って言ってたけど……。


「朱里くん、好きな子と会ったりした?」


連れ込まなくても、デートとか……。



「むしろ珍しく会えなかったよ」


「珍しくって……!じゃあ……」


あたし、鋭いからわかっちゃった。


ということは、”いつもは、会ってる”ということ……。


そうなると必然的に同じクラスの子だよね。


欠席で会えなかったのかな。


「なに?気になんの?」


あたしの体をはがして覗く顔は、にやっとしたいたずら口角。


「ううん。なにも聞きたくない」


耳を両手で押さえる。



朱里くんの好きな人の話なんて、そんなもの……。そんなもの……。



「一ミリも興味ないもん……」



ぷくっと膨らみかけた頬から空気を抜いて朱里くんを見上げると。


「……”一ミリも、興味ない”……」


どこか遠くを見つめる朱里くんから、掠れ声が聞こえたような気がした。


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