【完】君に惚れた僕の負け。
いたずらっぽいその顔に、胸がきゅうっと痛くなる。


「流されないもん……」


ていうかあたし、好きな人いるんだから。



「ならいいけど」


PAPAマグに注がれたココアをふぅーっと冷ます横顔。



全部愛しい……。



恋っていいなぁ。


些細な日常が、一気にたのしくて幸せなものに変わるんだもん。



そう思うあたしは、甘いココアよりずっと、考えが甘かった。





冬休みに入ってすぐ。



朱里くんは中学の友達と遊んでいるらしいけど、


あたしは高校の友達と丸一日遊び尽くした。



時が過ぎるのはあっという間で、気づけば夕方なんだから、びっくりだよ。


もう帰る時間だ。


「あたし、スーパーに寄ってから帰るね」



「あははっ、主婦!ばいばーい!」



友達に手を振って、夕暮れの道を一人で歩く。


朱里くんはさすがにまだ帰ってないかな。



今日はオムライスにしよう。


朱里くんの分だけでいいから今日こそ卵がうまくいきますように。



願いを込めながら卵パックをカゴに入れて、野菜もちょっと買い足して。


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