【完】君に惚れた僕の負け。
◇
空っぽの家に帰ってもう1時間は経っているけど朱里くんはまだ帰ってこない。
いま何してるんだろう。
「はぁ……」
朱里くんに好きな人がいるって、知ってたはずなのにな。
どこか実感がなくて、全然わかってなかった。
だけどもう、朱里くんの好きな人の姿も、朱里くんが向けていたあの表情も、生々しく瞼の裏に焼き付いている。
思い出すだけで胸が苦しい。
「ただいま」
玄関から声がして、あわてて涙だらけの顔をごしごしと拭った。
「おかえり……」
「声、暗。って何、この割れた卵は?」
「あ、それは……落としちゃって」
「ドジかよ」
笑いながらそんなめんどくさいものを片づけ始める朱里くん。
……なんで上機嫌なの。
亜瑚ちゃんとうまくいったから?
別れさせてあげるって、そう言った通りのことを成し遂げられたから?
だから、機嫌がいいの?
亜瑚ちゃんと朱里くんが並ぶ映像が鮮やかに頭に浮かんでくる。
誰かを想う朱里くんなんて嫌だ……。
ぷくっと涙が浮かび上がっていく。
空っぽの家に帰ってもう1時間は経っているけど朱里くんはまだ帰ってこない。
いま何してるんだろう。
「はぁ……」
朱里くんに好きな人がいるって、知ってたはずなのにな。
どこか実感がなくて、全然わかってなかった。
だけどもう、朱里くんの好きな人の姿も、朱里くんが向けていたあの表情も、生々しく瞼の裏に焼き付いている。
思い出すだけで胸が苦しい。
「ただいま」
玄関から声がして、あわてて涙だらけの顔をごしごしと拭った。
「おかえり……」
「声、暗。って何、この割れた卵は?」
「あ、それは……落としちゃって」
「ドジかよ」
笑いながらそんなめんどくさいものを片づけ始める朱里くん。
……なんで上機嫌なの。
亜瑚ちゃんとうまくいったから?
別れさせてあげるって、そう言った通りのことを成し遂げられたから?
だから、機嫌がいいの?
亜瑚ちゃんと朱里くんが並ぶ映像が鮮やかに頭に浮かんでくる。
誰かを想う朱里くんなんて嫌だ……。
ぷくっと涙が浮かび上がっていく。