【完】君に惚れた僕の負け。
いつの間に片づけが終わったのか、朱里くんがあたしの方に来た。



「恋々?」



少しかがんだ彼から、不自然な速度で顔を背けてしまった。



「え……泣いてんの?どうした?」


あたしに向けてくれた心配そうな声が切なくて苦しくなる。



だって、同じように心配そうな声をさっき聞いたばかりだから。



亜瑚ちゃんにむけられた言葉がよみがえってくる。



『放すわけねーだろ』



真剣に彼女の腕を掴んで、


『……ちゃんとしろよ』



切なそうに顔をゆがめて、願っていた。




朱里くんの心の中にはあんなに特別なひとがいるんだ。



「恋々? なんかあったの?」


なのにあたしにまで、どうしてそういう顔をするの。



「……朱里くんって、亜瑚ちゃんを好き?」


「は?」


「さっき偶然コンビニで見たんだ……。恋人と別れさせてあげたの?」



「あぁ、そうだけど。え?それで泣いてんの?」



頷きはしないけど、否定もできない。



そんな中途半端なあたしに、朱里くんはもう一度聞いた。




「……例えば俺が亜瑚を好きだとしたら、それって恋々に関係あんの?」



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